2022年度 No.44

『エバと2人の子(後編)』
石﨑善土師

創世記4章17~26節

…カインに七倍の復讐があるなら、レメクには七十七倍。」アダムは再び妻を知った。彼女は男の子を産み、その子をセツと名づけた。カインがアベルを殺したので、彼女は「神が、アベルの代わりに別の子孫を私に授けてくださいました」と言った。セツにもまた、男の子が生まれた。セツは彼の名をエノシュと呼んだ。そのころ、人々は主の名を呼ぶことを始めた。

メッセージ要約

 弟のアベルを殺したカインが殺されないよう、カインを殺す者には7倍の復讐があるとされました。神はカインも愛していたため、憐れみによりそのようにしました。この事は、世に悪が繁栄するもとにもなっています。
 この特権は、守られるためのものでしたが、神に従わないカインは、これを逆手にとり、他を支配し、自分のやりたいことを進めることに利用した姿が見えます。彼は指導者として町を建て、町の名に息子の名前を付ける実力者へとなりました。カインの子孫であるレメクは、カインへの約束を勝手に拡大させ、カインの7倍にたいし、自分には77倍だと大きなことを言います。そうして、神の憐れみを逆手にとった悪が繁栄し、世界に満ちて行きます。
 神の憐れみを逆手にとり好き勝手するのは、世の常、人間の本性と言えるでしょう。悪は好き勝手に振る舞い、神の守りにより滅びることもない。現代へと続くこの物語には救いがないのでしょうか。エバは、カインを産んだとき、「私が得た」という意味から名前をつけました。そして、アベルが殺された後に産んだセツには、「神が授けた」という意味から名前をつけます。ここに、エバの信仰(心境)の変化が見てとれます。エバは息子を産んで、あの蛇の頭を打つ子孫(創世記1:15)だと思いました。その事に対し、最初は「私が得た」という、自分の関与があるという思いでしたが、後には「神が授ける」という、神が与えて下さるという思いへと変わっています。
 エバが待ち望んでいる神の約束の実現は、どんなに悪が栄えたとしても、微塵も影響を受けません。それは、私たちへの約束も同様です。神の守りを逆手にとった悪が栄えていても、私たちに対する約束は、必ず「神が授けて」くださいます。その実現のはじまりが、あの十字架です。神の約束の実現は既にはじまっていることに目を留めて歩んで行けるように願わされます。